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メモ魔のめもまみれBlog

ブログの名前をすんなり噛まずに言えたなら

シリア難民と英語

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1月4日に放送されたBS世界のドキュメンタリー「ヨーロッパ難民危機~越境者たちの長い旅路~」は、2015年9月ごろのシリア難民の状況を取材したドキュメンタリー番組だったのですが、私にとってこの番組は英語の重要性を伝えてくれるものでもあったのでメモメモ。

3歳の男の子の溺死写真

少し前にネット上でも話題となりましたが、溺死してしまったシリア難民の3歳の男の子の写真(閲覧注意)は世界に衝撃を与えました。これは、トルコの町ボドルムからギリシャのコス島を目指す難民ボートに乗っていて、それが転覆した事故により起こった悲劇でした。

難民のテントの脇を通る休暇を楽しむ人々

ギリシャに流入する難民は月に10万人を越え、その7割はシリア人だそうです。難民ボートで無事にギリシャのコス島に渡ってくることができたシリア難民のムハンマドさんは番組内で「ボートで海を渡ることをみんな死の旅と呼んでいます。私達のボートにも水が入ってきて妻も子も怯えきっていました。」と回想していました。また、イスラム国(Islamic State、IS)支配下のシリア北部の都市ラッカから逃げてきた彼らは、そのラッカの現状についてこう答えていました。

「切り落とされた人の頭が交差点に晒されていました。まだ3歳の私の娘までそれを見ています。連中はみんなの前で公開処刑をするんです。ラッカの中心部ナイームの交差点を通った時には、55人の首が金属の棒に刺されて並べられているのを見ました。」

「妻が赤ん坊の耳を覆って、私は娘を抱きしめて耳を防ぎました、爆撃の音が聞こえないようにするためです。ところがある日、私達の家の近くにミサイルが着弾したんです。それ以来、娘は爆撃の音を聞くたびに泣き叫ぶようになりました。」

ギリシャのリゾート地であるコス島に、現在は難民キャンプが溢れており、難民のテントの脇を通る休暇を楽しむ人々というその光景は非現実的な気味の悪さだとリポーターは伝えています。 ギリシャ政府は自国の経済を建てなおすのに精一杯で、難民の世話にまで手が回りません。一方、親切にし過ぎてもいけないという考えがあるのも事実で、国境なき医師団のバンゲリス・オーファヌウダキスさんはこう答えています。

ギリシャに限らずヨーロッパでは人道的支援がさらに多くの人の移住を促すことになりかねないと考えられているのです。」

このあたりの話は、以前記事にしたメリッサ・フレミングさんのTED動画とも関連しそうです。

また番組の中では、シリア人というだけで差別を受けているという元宇宙航空エンジニアの話も紹介されていました。

「私はアラブ首長国連邦に住んでいますがシリア人です。シリア人だとどこにいても迫害を受けるんです。居住ビザも発行してもらえません。」

難民のEU越境ルート

冒頭の3歳の男の子は、シリアを逃れてトルコに行き、トルコからギリシャのコス島にボートで移動するときに転覆して亡くなってしまいました。仮にコス島に逃げてこられたとしても、ヨーロッパまで逃れるためにはそこからさらにいくつもの国を通過しなければなりません。当時は、難民の多くはシリアからトルコ、ギリシャマケドニアセルビアハンガリーオーストリアと通ってドイツなどのヨーロッパ諸国を目指したようで、この番組でもそのルートの難民を取材していました。

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現在は、ハンガリーのルートが閉鎖されて、難民にとってはルートに関する問題も浮上しており、さらに混乱を極めているようです。

仮にものすごい時間と労力を掛けて1つ1つの国に到達しても、さらにそこで何時間・何日も待たされて「難民登録」というのをしなければならない状況で、雨が土砂降りの中で待たされていたり、親とはぐれて泣き叫ぶ子供がいたり、順番待ちが原因で口論になっていたり、とその難民登録所の重苦しい空気は尋常ではない感じです。

ソブヒと英語

そういう状況の中で、この番組ではソブヒという中年のシリア人男性の難民がたびたび出てくるのですが、彼は、良く言えばたくましく、悪く言えばずる賢く、悲惨な状況の難民の中にあってもなぜか必ず生き残りそうな異様な生命力を放っていました。

この彼の生命力は文章で説明するのはむずかしく、この番組を見ないと伝わりにくいものだと思うのですが、そんな彼の長所の1つが英語力でした。

英語を話せる彼は、その英語力が同行者たちに重宝されていて、行く先々で新しいパートナーを見つけては協力し合って(そして時には喧嘩別れもして)、それぞれの国境や逆境を乗り越えていくのです。

ドイツまであと少しのところでリポーターに「こうなるとわかっていてもこの旅をしましたか?」と聞かれて、彼はこう答えていました。「旅をしたと思うよ。ひどい目にも遭ったけど地獄よりマシだから」

そして、この番組の終わりのナレーションはこう締めくくられていました。それくらいソブヒの生命力は突出していると言い切れるということなのでしょう…。

「(今回取材した難民の)彼らにどんな未来が待ち受けているか予想もつきません。しかし、ソブヒはうまくやっていくような気がします。」

なんとも憎めないキャラクターである彼は、確かに今後も様々な状況に順応してうまくやっていきそうな気がしました。そして、英語が大事だということは頭ではわかっていても、今までなかなか勉強する気が起きなかったのですが、このソブヒの生き延びるための道具としての英語という能力を目の当たりにしたら、不思議と勉強する気が起きました。